どうやって骨をつくるのですか?
骨を形成するプロセスについては、それぞれの方法や技術が存在しています。かつては、インプラントを埋め込むためには骨の厚みや形状が不足していると使用できない、とされていました。しかし、最新の材料開発や技術進歩により、これらの制約を克服する手法が開発されています。
例えば、骨の厚さが不十分な場合や形状が不整合な場合、インプラントを埋めるために骨を生成する技術があります。これをGBR(Guided Bone Regeneration)と呼び、不足している部位に骨形成物質を注入することで骨を再生する方法です。具体的には、骨が不足している箇所を切開し、自身の骨や骨様物質、人工的な骨充填材を配置し、その上にコラーゲンや化学的に合成された皮膜を使用して手術を行います。これにより骨が再生されることが期待されます。ただし、手術部位に充填材を配置し皮膜で覆った後は、粘膜を適切に閉じる必要があります。手術後の粘膜の伸展が上手くいかない場合や、粘膜同士を正確に縫合できないと問題が生じる可能性があります。また、手術部位に過度の圧力が加わると縫合部が裂けて皮膜が露出し、感染や十分な骨再生が阻害される可能性があります。
この技術は元々、歯周病の治療のためにヨーロッパで開発されたものであり、その開発過程は主に白人を対象として行われました。彼らの場合、粘膜の量は一般的に日本人の2倍あるとされ、粘膜を伸ばす作業が容易であるため、日本人よりも実施しやすいとされています。
なぜGBRは難しいのか
このGBRを成功に導くのは、粘膜の中に入れた補填材や遮断膜が手術後に露出しない事です。しかし、よくあるのは縫合した粘膜が裂開して補填材や遮断膜が露出してしまう事です。なぜこれが起こるかと言えば、血流の問題からです。補填材や遮断膜を入れなければ裂開は先ずは起こりません。それは、下の図の様に粘膜に行く血液のルートが複数確保されているからです。しかし、補填材などを入れると、縫合した粘膜の部分で血流の再開が起こらなければならないからです。また、補填材を入れると容積が増しますので、それだけでも粘膜の閉鎖がしにくくなるからです。ちょうどガマ口型のお財布に沢山のお金を入れると閉まらないのと一緒です。
ただ、粘膜が裂開してしまえば全くの失敗かと言えばそうでもありません。裂開しない時に比べて骨が出来る量は少なくなりますが、造骨される場合が多いです。よって、当院ではGBRに関しては、複数回行う必要があると考えています。