- 治療について - 根管治療Q&A
根管治療Q&A
根管治療とは何ですか?
歯には口の中に見えている部分以外にも歯茎の中に埋まっている部分があります。その部分を歯根と呼びます。その歯根は歯茎の下の骨(歯槽骨)に埋まっています。
そして、歯の中は空洞があり、この中に歯髄と言う組織が入っています。これは触ると激痛なので、通称は神経と呼ばれています。そしてこの空洞は歯根の中にもあり、これを根管(こんかん)と呼ばれています。そしてこの根管の中を治療するのが根管治療です。
この根管治療は、歯髄の中に細菌が入り込んだ場合に必要になります。具体的には虫歯を放置してしまって、歯髄の中まで感染させてしまった場合や、歯のヒビからの感染の場合も有ります。
人体の通常の組織の場合、感染してしまっても抗生物質等の服用で治りますが、この歯髄に関しては、直ぐに壊死をしてしまうのです。よって根管治療はこの壊死をしてしまった歯髄を取り除き、根管内を洗浄し根管に歯髄に代わる充填物を詰める治療を言います。
歯の根の治療のことを言うのですか?
その通りです。
上記のように、根管の中の組織(通称:神経)が壊死してしまった場合や、一度根管治療をしたのに、その後に痛みがあり、再度の根管治療をする場合もあります。
歯髄って何ですか?
歯髄は人体の中の組織の一部で、細胞もあれば、血管も神経もあります。この歯髄は、歯の根の先の根尖孔を通して生体から血液供給などの循環を受けています。ただ、麻酔が効いていない状態で触ると激痛を感じますので、通称、歯の神経と呼ばれています。この組織は非常に弱い組織で、感染を起こすと容易に壊死をしてしまいます。また、この歯髄は歯を削ってゆくと露出する部分であり、少しでも露出すると必ず出血をします。つまり出血をしていない状態では見る事が出来ないと言う特徴があります。ですから、歯髄の色から病態を診断する事ができない特徴があります。
英語では、根管治療ははルートキャナルと言いますか?
その通りです。海外では「Root Canal Treatment 」と呼ばれます。
正しくは、トリートメントが付きますが、一般的にはルートキャナルと呼ばれています。
根尖孔とは何ですか?
歯の根の先に孔が開いています。そこを指します。根尖孔(コンセンコウ)と呼びます。この穴から血管や神経が歯の中に入ります。その神経や血管等の塊を歯髄と呼びます。この歯髄が壊死をした場合の治療が根管治療となります。根管治療は、根の中の根管と言う部分をできるだけ消毒をして最終的にはこの根尖孔にしっかりと蓋をする事です。この根尖孔の直径は0.1ミリから0.3ミリ程度です。当然、歯の種類や年齢によっても違いがあります。
治療は痛いのですか?
麻酔をしてから治療を行いますので痛くありません。当院では、2回目以降も麻酔をして根管治療を行います。歯の中の歯髄が無ければ理論的には痛くないのですが、歯髄が残存していた場合には痛みがありますので、麻酔を行ってから治療をいたします。
治療の度にチクチクします。いったい何ですか?
麻酔をしないで根管治療をすると、根の先の孔である、根尖孔付近を触るときにチクチクする不快感があります。しかし麻酔をすれば問題は有りません。ただし、麻酔をしてあるからと言って、暴力的に根尖孔付近を突きますと、術後に痛いです。よって、キャナルメーターという装置を使って、根尖孔の位置をしっかりと把握して行う必要があります。
根管治療には何回かかるのですか?
米国では1回または2回程度で終了します。しかし日本では長い場合は毎週通って、半年とか1年間通ったなどという話を聞きます。これは根管治療に対する治療方法が大きく異なるからです。米国の専門医で行われている方法では、積極的に根尖孔を閉鎖して治癒を期待するのに対して、日本で行われている方法は症状が無くなってから、そこそこに根尖孔を閉鎖する方法が取られているからです。日本ではこの方法が40年間以上変わらず教育されています。世界的に見れば時代遅れとしか言いようが有りません。当院では米国の専門医で行われている根管治療を更に改良した方法で根管治療を行っております。よって治療回数は1回から多くても5回程度です。
根管治療はどんな時にするのですか?
神経が有る歯(歯髄がまだある歯)の場合に、激痛があり夜中に痛くて目が覚めたのが2回程度有った様な場合は、もう歯髄はかなりダメージを受けていると判断できます。この時に行うのが「抜髄(ばつずい)」という根管治療です。つまり、最初の根管治療の場合です。
また、根管治療が一度行われている歯でも、治療の状態が良くなければ、咬めない様な不快な状況が出てきます。この時に行うのが再根管治療です。この多くが根尖孔の閉鎖不全です。つまり、根尖孔の閉鎖がしっかりとされていない場合です。
治療を受ける歯科医師によって将来の歯の状態に差が出ますか?
根管治療は、かかる歯科医師により予後に大きな差が出ます。被せたり詰めたりする様な治療と違い、根の中で行っている治療は入口しか見えないからです。また、治療に対する考え方も大きく影響を受けます。日本での根管治療の治療成績は諸外国に比べると良くありません。根管治療をした歯の半分程度に、術後のレントゲンで病変を認めると言う須田らの論文が有ります。これは根管の洗浄にばかり重きを置き、根管充填にはあまり気を遣わない側方加圧根充だからだと私どもは考えています。私どもでは、この様な側方加圧根充は行っておりません。また、日本の健康保険の診療報酬が余りにも低いのも予後が良くない原因の一つと考えられています。
根管治療に使うお薬について教えてください。
洗浄材として次亜塩素酸ナトリウムやEDTAが用いられます。これらは必須の薬剤です。
根管治療で大事なのは何ですか?
出来る限り「根管内の細菌の数を減らして、根尖孔を確実に塞ぎ、歯を密閉する事」です。これをしっかり行えば、ある程度、咬んで痛いような症状が有っても治る場合が多いのです。半年に渡って根管の中の薬剤を交換しに通う様な治療は無意味な場合が多いのです。
根管治療で使っているあの針みたいなのは何ですか?
ファイルやリーマーと呼ばれる器具です。細いものから太いものまでISO規格(国際標準規格)となっています。用途は、根の先を探したり根の中を拡大したりする切削器具としても使います。 使い方を誤ると、根の中で折れてしまいます。用途として最も大事なのは根尖孔を探すのに使用します。
治療後にその歯で咬むと痛いのですが、神経の無い歯がどうして痛いのですか?
歯は痛くないです。歯を包んでいる歯根膜という歯の周辺が痛いのです。しかし、しっかりと根尖孔を閉鎖すれば咬んで痛いような症状は消失します。
治療中ですが、薬の様な臭いに悩まされています。なんでしょうか?
ホルマリン系の薬を入れると、凄く臭います。歯の中に入れた薬剤でも気化して血管の中に流れ込みます。この様な薬剤は使わないに越したことはありません。当院ではこの様な薬剤は使用いたしません。
「抜髄治療」って何ですか?
歯の中に有る歯髄を除去する処置を言います。
当然、元気な歯髄は除去はしません。除去するのは、壊死をした歯髄かほぼ壊死をしかかっている歯髄です。一般的に神経を取ると言われた場合はこの治療に該当します。
「感染根管処置」って何ですか?
日本の健康保険治療では再度の根管治療を、感染根管処置(かんせんこんかんしょち)と呼びます。つまり、一度根管治療をした歯のやり直しをそう呼びます。
根尖孔を塞ぐのに使うのは何ですか?
一般的にはガッタパーチャという素材を使います。これは東南アジアで作られる、天然ゴムに類似する樹液の成分と酸化亜鉛などを混ぜ合わせたモノです。熱すると軟化し、冷却すると固体化する性質があります。そして、シーラーという、糊の様な素材も一緒に使います。現在ではこのシーラーはバイオセラミックガラス(生体ガラス)という素材が一番良いとされています。このガッタパーチャをどう使うかで、治療の予後がかなり違います。側方加圧根充法という日本の殆どの歯科医院で行われている方法は、固形のガッタパーチャにシーラーを付けて根管の中に沢山入れる方法です。ポイントはガッタパーチャを固形のまま使う事です。しかし、米国の専門医や当院で行っている方法は、ガッタパーチャを熱して半固体化させて根尖孔付近を充填します。要は半固体化されているために根尖孔の形態に沿って形を変化できるので緊密な閉鎖ができるからです。
歯根破折ってなんですか?埋まっている歯の根が折れるのですか?
歯の根は意外に折れます。特に、根管治療を行ってある歯ではその確率は高くなります。それは、歯の内面を治療のために削ってあるので、強度が落ちているからです。根管治療の際に歯の内面を削らないで済めば良いのですが、根尖孔を閉鎖させるためには、歯の内面をある程度削らざるを得ないからです。ただ、この概念にそって、最小限に歯の内面を削る必要があるのです。
根先病巣(こんせんびょうそう)って何ですか?
根管治療後に、根の先に出来てしまった病巣を言います。
この病変ですが、レントゲンでは根の先が黒く映って見えます。ただ、黒く見えるからと言って全てが病変でありません。黒く見えるのは本来、骨がある部分に骨ではない組織に置換されているのです。その多くは軟組織です。この軟組織を多くの歯科医師は「膿の袋ができてます」と言いますが、その様な呼び方は不適切です。かさぶたの様な瘢痕の場合もありますし、治っている途上の場合もあります。また、10年以上に渡って観察をしていますと、何の変化もない場合も多いのです。ですから、当院では症状があるかどうかを大切にしています。そして歯科用CTによる大きさや形態の診査をします。そしてあまり病変が大きくなく、殆ど症状の無い場合は経過観察としています。
歯根嚢胞(しこんのうほう)って何ですか?
歯の根の先に生じる病変です。簡単に言うと、本来は骨であるべき部分に嚢胞という袋状の病変が出来てしまいます。歯髄が生きている歯には絶対にできません。不適正な根管治療が行われた場合に多くは認められます。この他にも歯根肉芽腫というものもありますが、レントゲン画像からだけでは区別は殆ど付きません。一般的には病変が小さいなら肉芽腫で大きければ嚢胞などという様な具合で区別されています。確定診断をするためには、その部分の細胞を顕微鏡で見る病理学的検査を行う必要があります。しかし、根管治療で治ってしまった場合は、病理組織は取れません。よって、どっちだったかの確定診断は出来ないのです。
歯根嚢胞(しこんのほう)は手術で取り除くしか有りませんか?
一般的にはその様に言われています。しかし、私どもが行っている根管治療により、かなり大きな根尖病変も治っている事から、治癒する事が有ると考えています。ただし、上記の様に病理学的検査は不可能ですので、断言はできません。ただし、日本口腔外科学会のホームページにも根管治療で治る場合もあり得ると記載があります。
治療に顕微鏡(歯科用マイクロスコープ)は必須ですか?
無くても根管治療は可能です。
文献的にも、顕微鏡を使った根管治療と使わなかった治療では、顕微鏡を使った方が良いという証拠は見つからなかったと有ります。ただし、私達は使った方が正しい姿勢で根管の中がよく見えますので、有った方が良いと考えています。
しかし、奥歯の様に根が曲がった歯では、マイクロスコープを使ったとしても根の先までは絶対に見えません。その部分はやはり手探りになります。よって術者の技量による部分の方が顕微鏡を使う使わないより重要になります。当院では全ユニットにマイクロスコープが標準仕様で装備されています。根管治療以外にも殆どの治療で使用いたします。当然、私どもの都合で使っていますので、追加の費用は掛かりません。
治療にラバーダムは必須ですか?
したほうが良いです。しかし、しないからと言って成功率が下がる根拠は乏しいのです。 世界中で発表されている論文でも、このラバーダム使用するかしないでの予後に関する関連性を完全に示唆する論文は実のところありません。それは検証がしにくいからです。ラバーダムの意義は口腔内の細菌を唾液を介して根管内に入れない事です。しかし、根管治療をする歯は、100%細菌が存在します。よってラバーダムをすることは、必要以上に細菌の量や種類を増やさないという意味なのです。ですから、唾液さえ入らないように処置をすれば、ラバーダムをしなくても予後は変わりません。予後に影響を受ける因子は、治療時のラバーダムの装着の有無ではなく、根尖孔の閉鎖状況の方が遥かに影響を与えます。また、ラバーダムが出来ないなら根管治療は出来ないと言う歯科医師もいらっしゃいますが、そんな事はございません。
夜中に歯が痛くて目が覚めました。歯科医を受診をしたら、神経を取る処置が必要と言われました。本当ですか?
私どもでも、夜中に2日程度歯が痛かった場合は、歯髄にかなりの細菌感染を来していると考えています。この歯髄と言う組織はかなり変わっていて、出血していない状態で観察をする事が困難なのです。もしも、出血していなければ色や艶である程度、皮膚面の様に病態の予測が付きます。しかし、この歯髄は歯を削っていって歯髄に到達した途端に出血をしてくるのです。もしもこの段階で、何かの試薬で歯髄の状態が分かれば、歯髄を取らないで済む場合もあり得ると思います。ただ、現在では出血の仕方や病態の状況から考える以外にないのです。
妊娠中ですが、根管治療を受けて良いですか?
理論的には可能です。ただ、妊娠後に出来るようならそちらの方が良いと思います。 激痛の場合は当然、治療を行います。この場合、歯の中に入れる根管薬も考慮する必要があるからです。
根の治療を受けています。毎週通って半年が経ちます。いつまでかかるのでしょうか?
日本では、歯科医師国家試験の歯内療法(根管治療)分野の出題において、歯を叩いて痛かったら根の中を詰めてはならない。これが正解とされています。よってこれを真面目に守ると、いつまでも根管充填はできません。そればかりか、回数を重ねると逆に雑菌が繁殖し治りにくくしてしまってます。しかし、実際には、根尖孔をしっかりと塞いでしまえば、その様な不快な症状は消失します。よって、米国の根管治療専門医では1回から数回で治療は終了します。当院でも同じです。
根管治療を受けていますが、歯茎にニキビみたいなモノができて、膿が出ています。治りますか?
歯の根が折れていなければ、しっかりと根管内を洗浄して根尖孔を塞げば治ります。
フィステルって何ですか?
歯の根の中が感染してしまい、放置しておくとそこから歯槽骨の中まで炎症が生じて膿が溜まり歯茎から出てくることがあります。これをフィステルと呼びます。ただ、国際的にはサイナストラクトが一般的です。日本語では瘻孔。あと、滅多にありませんが、頬側の皮膚面から排膿をしてくる場合もあります。これを外歯瘻と呼びます。この様な場合は糖尿病の様な全身的疾患の存在も調べる必要があります。
健康保険で根管治療を30分受けましたが、とても支払額が少なかったのです。そんなものなのでしょうか?
日本の保険制度では、根管治療の診療報酬は非常に低く設定されています。よってその様な支払い金額になってしまうのです。歯の治療で最も大事な治療がこの様な診療報酬になっているのは残念です。よって最近では自費の根管治療を行う歯科医院も増えてまいりました。当院でもその様な設定がございます。
根管治療の失敗って有りますか?
骨は多少削っても、再生します。しかし歯は再生しません。(正確に言うと、歯髄再生治療を行えば、歯の一部は再生します)根管治療は歯の内面を削る必要があります。この削るという行為の際に、歯の外側までドリルを貫通させてしまうようなこともあります。これを穿孔と呼びます。この他にも歯の内面を薄く削ってしまい孔があく、ストリップパーフォレーションもあります。また、致命的な失敗ではありませんが、根尖孔の閉鎖がしっかりできていない場合も不具合を生じます。
根管治療中に歯の中で器具を折って残してしまったと聞きました。どうなりますか?
根管治療に使うファイルと言う細長い器具や、ロータリーファイルと言う回転器具の先端が根管内で折れることがあります。そして、その素材と、根の中のどの位置で折れたかが問題になる事です。ステンレスの様な素材で、根の先に余り近くなければ取れる場合も有ります。しかし、ニッケルチタンの様な素材の場合は、食い込んでしまってほぼ回収は出来ません。
ただし、ステンレスの器具の場合、折れる兆候が分かります。器具のねじれ具合を目で見れば分かるのです。ねじれが伸びた部分が出てくるからです。しかし、ニッケルチタンの器具の場合、形状記憶合金のため、伸びた部分が現れないので金属疲労を察知できないのです。それでは、これらの器具を使い捨てにすればよいのですが、あまりにも日本の根管治療の診療報酬は低いので健康保険の場合は滅菌した器具を使わざるを得ないのが現状なのです。当院では自費診療の場合は全ての根管内小器具は使い捨てにしています。
抜髄処置を受けてから、痛みが無くなしました。よって歯科医院には行かなくなりました。最近、また歯が痛くなって咬めません。どうしてですか?
根管の中の歯髄を取り除いて暫く経過をすると、何も症状がなくなる場合が多いです。それは歯髄と言う、痛みのセンサーを取ってしまったので痛くないだけです。ただこの状態で放置をしておくと仮の蓋も外れてしまいます。そうなりますと根管の中に細菌が侵入してしまいます。それが根の先の根尖孔から漏れて歯根膜という歯の周囲に炎症を起こし始めます。こうなると咬むと痛いという症状が出てきます。また、仮の蓋が外れた状態で硬いものを咬んで歯が割れてしまっている場合もあります。いずれにしても抜髄処置をしたら、途中で放置をすることは歯を失う事につながります。
外科的根管治療って何ですか?
通常の根管治療は、根管の中から治療をします。それでも治らない場合に歯の根の有る部分の骨を削って根の外側から根尖孔を詰めることをします。当院では統計的にはこの様な外科的根管治療の頻度は低いです。しかし、前歯で歯の被せものを最近作ったような場合で被せものを削って外したくない場合などに行う事があります。
根管貼薬って何ですか?
根の治療中の歯の中に置いておく薬の事です。雑菌を繁殖させない程度に使います。
水酸化カルシウムを使うのですか?
根管治療のお薬です。ただ、薬と言うより、超アルカリにより細菌等を死滅させます。
ただ水酸化カルシウムは気化はしないので、根尖孔付近まできっちりと詰め込む必要があります。しかし、根尖孔の先には骨があり空気が抜けません。よってこの付近まで水酸化カルシウムを詰めようと思うと、もの凄く細い針の注射器か強圧をかけて押し込む必要があります。ただ、もしも根尖孔から漏れ出してしまうと、強アルカリ性の物質が骨と接してしまいます。すると激痛を生じます。よって根尖孔からの押し出しは禁忌とされています。当院ではこの様な薬剤を使わないでも予後の良い根管治療を行えますのでご安心下さい。
パーフォレーションって何ですか。
根管治療の際に主にドリルの方向を誤り歯の外に向かって穴をあけてしまう事を言います。20年位前は、即抜歯となりました。しかし現在ではMTAセメントで穿孔部を閉鎖することにより歯を抜かないでも済む様になりました。ただ、穿孔部の位置によっては閉鎖することができない場合もあります。
MTAセメントで詰めるって言っていましたが、それは何ですか?
物質としてはコンクリートの一種です。そして、組成的にはホームセンターに売っているコンクリートとあまり変りないそうです。ただし、粒子を細かく純度を高め、ヒ素の様な有害物質を取り除いてあると言われています。そのため、かなりコストの高いセメントです。そして、通常の歯科材料は水分を嫌うのに対して、MTAセメントは水分が有ったほうが良いのです。よって水を含ませた材料を一旦、歯の中に入れておくこともあります。
自費の根管治療とは何ですか?
健康保険を使わない根管治療です。日本では診療報酬が非常に安価です。 また使用できる材料も決まっております。自費の根管治療の場合、時間を十分にとり、使い捨ての器具を使い材料も世界標準の物を使って行う事ができます。
ラバーダムが出来ないので根管治療は出来ないと言われました。そんな事はあるのですか?
ありません。ラバーダムが出来なくても根管治療は出来ます。 ただ、歯の崩壊が少なくラバーダムが装着可能なら、使った方が良いに決まっています。
グラグラの歯は根管治療が出来ますか?
歯は歯槽骨という骨に埋まっています。その骨自体が吸収してしまうような歯槽膿漏の場合、無効であり、意味が無い場合が多いです。
歯をぶつけてしまって、神経が死んでしまいました。根管治療はしなければならないですか?
乳歯の前歯で虫歯が無いような歯の場合は、経過観察で良いです。しかし、永久歯の場合、神経が死んだままにしておくと、歯の内部、外部から歯の根が吸収して来る事が有ります。そのため治療はしておいた方が良い場合が多いです。
ただ、稀に以前に歯をぶつけてしまい、神経が死んでいるにも関わらず、レントゲンを見ると歯根自体が何ともない場合も有ります。この場合は経過観察とします。
神経を取ってしまった歯は折れやすいと聞きましたが、そうですか?
その通りです。神経(歯髄)は出来るだけ残した方が良いです。その為には、歯が痛くなる前に歯科医院に行っておく必要が有ります。
歯根膜炎って何ですか?
歯は歯槽骨という骨の中に埋まっています。ただ、歯は歯槽骨とは直には接していません。歯根膜という膜を介して骨に埋まっています。その部分に炎症が起こると歯根膜炎となるのです。虫歯を放置しておいたり、歯周病を放置した場合になります。症状としては、咬むと痛いです。
ガッターパーチャって何ですか?
マレーシアあたりの国で産出される天然ゴムの一種。ガッターパーチャの木から樹液を採集して作ります。生体に対して刺激が無いので、長い間根管を充填するのにこの物質が使われています。熱可塑性があり、ユーカリオイルの様な物質に溶ける性質が有ります。
なお、根管充填用のガッターパーチャはメーカーにより硬度が異なりますので、慣れていないメーカーを使うと結果が出ません。
私どもが行うスーパー根治も国産のP社の物限定です。これ以外のメーカーを使うとダメです。
根管治療の上手い下手はありますか?
治療方法による差と器用、不器用の差ががあります。これほど差が出る治療は歯科治療では他にないでしょう。
ロータリーニッケルチタンのファイルって何ですか?
根の中を広げて、充填材を入れやすくする為のドリルです。形状記憶合金であるニッケルチタンで出来ています。柔軟な金属な為に、根管の中への追従性があります。しかし、使い方を誤ると根尖孔を必要以上に広げ過ぎてしまう事。また、再使用を繰り返すと根管内で先端が折れてしまう事があります。
仮の蓋が外れてしましました。どうしたら良いでしょうか?
細菌感染をおこしますので、早めに歯科医院に行きましょう。放置をしますと、根尖孔から細菌が漏れ出して痛みを生じます。また、歯が割れてしまう事があります。ただ、治療中に多少の蓋が外れても、除菌をして治療を続ければ問題はございません。
根管治療のゴールは何ですか?
長年に渡りその歯が使える事です。食事や審美面ももちろんです。
そのためには、根管内の洗浄と、根の先の根尖孔の密閉が大事だと考えています。
根管充填って何ですか?
根管治療において、最も大事な処置と私どもは考えています。
根の中の洗浄や消毒を行ってから根尖孔をしっかり閉鎖しておく必要があります。なぜならば、根尖孔が生体への唯一の交通路になるからです。根管内を完全に無菌化でき、これが継続できれば根尖孔の閉鎖は必要ありません。しかし、現実には根管内の完全無菌化自体が無理と分ってます。また、根管内に空洞があると、色々な化学物質が根尖孔から出てくるとの論文もあります。よって、それらを防止するために、細菌を出来るだけ減少させて根尖孔を緊密に閉鎖をするのです。よって当院では根管充填後のレントゲン写真を重要視しています。もしも根尖孔の閉鎖状態が良くない場合は、根管充填をやり直します。
根管充填をして良い条件は何ですか?
根管内の洗浄が出来ている事。歯の削り屑などが除去されている事。さらに根尖孔をしっかりと閉鎖できるため根管内の道づくりが出来ている事。これらが達成されれば、根管充填を行います。咬んだ場合に痛いような場合でも、きっちりと根管充填が出来れば、殆どの場合、1か月以内に治癒します。ただし根尖孔がしっかりと閉鎖されていない場合は、その限りではありません。
歯根端切除って何ですか?
通常の根管治療を行っても、症状が残存しレントゲン上でも病変の存在が有る場合に行います。簡単に言えば、そのレントゲンで見える病巣をソウハします。さらに歯根の先の方を削り取って、根尖孔を根管の外から詰めます。そもそも根管充填がしっかりできていれば、この様な処置は必要ありません。当院ではこの処置を行わなければならないケースは少ないです。
レントゲンを見せられて歯の根の先が黒いから治療が必要だと、言われました。現在は何の症状も有りません。治療した方が良いでしょうか?
私達は、存在を告げておきますが、経過観察とします。
この様な状態で治療をしてしまいますと、想定外の欠陥が歯の中に存在していたりして、痛みを出してしまう場合が有るからです。実際に、10数年以上経過観察を続けている根の先の黒い部分(歯根肉芽腫)もほぼ変化が無いケースが沢山有ります。
20年以上前に神経を取る治療を受けました。その歯が最近に、なって噛むと痛いです。どうしたのでしようか。
20年以上何の症状が無かった歯に痛みが起こる。この様な場合は、根が折れている場合が多いです。よって、根管治療を行っても無効な事があります。
根管って歯によって数や形が違うのですか?
根管は歯の種類によっておおよその数は決まっています。しかし、バリエーションも豊富なのが現状です。通常3つが標準の根管である大臼歯でも、人により4~5本だったりする事が有ります。現在では、術前に歯科用のCTを撮影しておけば、大抵の根管数は事前に把握できます。
根管の形態はその歯によって様々です。根の先で根管だけが曲がっている、などと言う歯はしょっちゅうです。
米国の根管治療はどのような治療のですか?
米国の歯科医療は一般歯科医と専門歯科医に分かれます。よって根管専門医も存在します。 その専門医に限った話ですが、ほぼ日本とは違った方法で行います。 簡単に説明しますと、ガッターパーチャと言う根管充填をする楊枝の先みたいな物があります。これは日本では細い規格の物ばかりですが、米国では3倍程度太い規格のガッターパーチャを用います。細い規格の物は腰が無いので、根の先から抜け落ちる確率が高いのです。しかし、米国の太い規格ですと、根の中にグッと押し込む事ができますので、根の先からすっぽ抜ける事がありません。そして、この太い規格のガッタイパーチャを根管内に挿入して、熱をかける道具を根管内に入れて瞬間的に加温するのです。そして、軟化させてからさらに押し込む方法を取るのです。 これをコンティニアウスウェーブテクニックと呼びます。このテクニックも悪くはないのですが、欠点も有ります。それは根の先の部分のガッターパーチャが軟化しにくいのです。そのため根の先の根尖孔の閉鎖が今一歩だと考えられます。
私達は、この米国式の根管充填は滅多に行いません。
スーパー根管治療の概念とは、どんなことですか?
一番大事にしている概念は、歯の根の先の根尖孔の完全閉鎖です。
コンティニアウスウエーブテクニックという米国の専門医で行われている方法では、これが達成出来ない場合が有ると考えています。
その理由は、固形の充填材を根管の中に入れて、後から熱をかけて軟化する治療法だからです。この治療では予め軟化した根管充填材を根管の中に入れて、根の先にまで運んでいって根尖孔を閉鎖します。よってこちらの方が確実です。ですから、レントゲンで根の先に影が有っても、根の先の影を消すことが出来るのです。
レーザーで治療が出来るのですか?
出来ません。一次的に根管内の除菌をする事は出来ます。しかし、完全なる殺菌は出来ません。 完全に殺菌するためには、根の先の根尖孔を密閉してしまう必要が有るのです。
冠を被った歯が痛みます。冠を外さないでレーザーで治療は出来ますか?
出来ません。フィステルやサイナストラクトと言われる膿の出口に、ある種のレーザーを照射すると、熱作用により一時的には治ったように見えますが、原因である歯の治療ができる訳ではありませんので無意味です。
治療中にピーピーと言う音がする機械を使われていますがあれは何の音ですか?
根管長測定器という機器です。これは日本が開発した機器で世界中で使われています。 これは、歯を抜かないで歯の長さを測る器具です。根管治療では根の先の根尖孔を塞がなければなりません。それを達成する為には、歯の根の長さ、正確には根管の長さを知っておく必要が有ります。この機械は人間には感じない微弱な電流を流して根の長さを測っているのです。そして、根の先に近くなると、ピーピーと教えてくれるのです。
麻酔をしないで行うものですか?
麻酔はするべきだと考えています。
根管治療をする際にはラバーダムを掛けるのが一般的ですが、これは麻酔をしないと結構痛いです。また、神経が有る歯は当然ですが、一度治療をしてある神経の無い感染根管でも、根の先をファイルと言う器具で触るとチクリとする場合が多いので、当院では麻酔をする事にしています。
レントゲンで見せてもらった根の先の黒い部分は治るのですか?
上手に根管治療を行えば治ると思われます。しかし根の中の充填物の除去が出来なかったり、歯が割れていた場合は、治りません。
左下の一番奥の歯の根管治療を受けてから、何か唇の辺りにかけて痺れるのですが、どんな原因が考えられますか?
この部分の歯の根の真下に三叉神経の第三番の下顎神経が走行している場合が有ります。 滅多に無いと思いますが、根尖孔からこの神経にファイルと言う器具が触れてしまった場合は起こりえると思います。しかし一時的な刺激ならば治ります。
他に考えられるのは、オトガイ孔と言う付近に麻酔をした場合に、これも下顎神経の分枝ですが、オトガイ神経に針が当たってしまうと一時的な麻痺は起こり得ます。しかしこれも治ります。
歯の根が折れていると言われました。接着剤で張り合わせて使う方法は有りますか?
物理的にはできなくはありません。ただし、折れて間もない例に限られますし、貼り合わせるために折れた歯を一時的にきれいに抜く必要があります。それが先ず無理です。そして、折れているのが縦方向で無いと無理です。また、接合できたとしても咬む圧力に耐えきれません。よって殆ど無駄です。
8歳の子供が転んで前歯を折って来ました。歯の中から出血します。これは何でしょうか?
歯の中の歯髄と言う部分からの出血だと考えられます。
少しの出血ならば、次亜塩素酸等で消毒をして歯髄を保存をする処置をします。しかし、感染の状況が激しい時は、歯髄を取らざるを得ない場合が有ります。ただ、歯は萌出間もない頃は、根の先が未完成なので、歯髄の範囲も明確では無い場合が多いです。
この様な場合は、治療が上手くいかない事も有ります。2021年現在、このような小児期の永久歯の破折には乳歯から採取した本人の歯髄細胞を培養し取ってしまった歯髄の中に移植する方法が開発されています。当院では、2022年から開始予定です。現在厚生労働省に再生医療計画を提出しております。
サイナストラクトって何ですか?
旧名称はフィステルです。日本名で瘻孔(ろうこう)。
つまり膿が出てくる孔の事です。その原因は歯髄が死んでいる歯です。出来物ではありません。よって、根管治療により消失します。
ただ、瘻孔の様に見えて破折に伴う腫れの場合も有るので、鑑別をする必要が有ります。
根管充填をしてもらっている時に、その部分に何か熱い感覚がありました。何なんでしょうか?
恐らく、「ヒートプラガー」と言う器具を使ったのだと思います。
火炎で温めるアナログ式から、電気的に温める器具も有ります。電気的に温める器具は瞬間的に200度程度を出すことができます。一般的には麻酔を使って行います。当然ですが、あまり長く温度を上げてしまうと、歯その物が火傷になってしまいます。私達はあまり使いません。
私は、あまり口が開きません。奥歯の治療を受ける事が出来ますか?
正直、厳しいです。細かい作業をしなければなりません。
そのため、顎関節症で口が開かない人の場合、治療で開くようになるのならそちらを優先します。
根管充填後に痛みが有ります。どうしてでしょうか?
根管充填にもよります。日本で一般的に行われている側方加圧根充方法の場合は、あまり痛みは有りません。実は、これがあまり良くないのです。きっちりと歯の根の先の孔を塞ごうと思えば、根の先端に向かって垂直的に圧を掛ける必要があるのです。そうすると、わずかですが根管内の残留物を根の先から押し出す可能性が有ります。その中には少量の細菌も含まれているはずです。
しかし、それは根の外ですから、通常の循環系が働きますので、貪食細胞等により退治されます。その期間はおおよそ1週間程度と考えております。
根の治療を受けてから、その歯で咬むと痛みます。どうしてでしょうか?
根の治療を受けている間は、どうしても咬むと痛む場合が多いです。それは歯根周囲の歯根膜が炎症を起こすからです。しっかり治療をすれば治る場合が多いです。
歯によって、根の数って違うのですか?
歯が埋まっている部位によって歯の根の形態は違います。前歯は1本が多く、奥歯は3~4本の場合が多いです。ただ、その歯の根の中に複数の根管と言う管がある場合も有ります。例えば、外見は1本の根ですが、根管は2本ある場合もあります。
「根の先が見つかりませんでした」と通院中の歯医者さんに言われました。どういう事でしょうか?
根尖孔と言う部分が根の先にあります。血管や神経がここから歯の中に入り込む孔です。 根管治療は根尖孔を閉鎖しますで、できる限り探さなければなりません。これが一番大事です。しかし、そうやすやすと見つから無い場合も多いのです。時間をかけてやっと見つける事もあります。ただ、まれに閉塞をしている場合があります。その様な場合はレントゲン的に病変を形成していません。もしも歯科用CTで根の先に黒い部分が確認できた場合は、根尖孔は見つかる場合が多いです。しかし、どうしても見つけられない場合は、外科的な根管治療を必要とする場合も有ります。
樋状根(といじょうこん)と言われました。それは何ですか?
これは、下顎の一番奥の歯、つまり親知らずの一つ前の歯の根管に見られる根管の形態です。日本の屋根に取り付けられている樋の様なU事溝の様な形をしています。米国では断面の刑場からc-shapeと呼びます。この根管は歯科医師からすると根管の入り口が分かりにくいので治療がしにくいです。ただ、根の先は必ず先細りになっており、焼いた八つ橋の様に根の先まで瓦状になっている歯は殆どありません。よって要領さえ得れば治療は難しくは有りません。
半年以上、根の治療に毎週通っています。これが普通なのですか?
全くの異常です。歯科医師自体が、ゴールが見えていないのです。
出来るだけ短期間で行ったほうが良いのです。1回または、数回です。こうしないと根管内で雑菌が繁殖してしまい、更に症状が取れにくくなります。
日本では、毎週通って根の中の掃除を行うような治療が丁寧と考えられている傾向がありますが、先進国ではその様な事はありません。
歯の中には神経が有ると聞きましたが、取ってしまったらどうなるのですか?
しっかり治療を行えば、感覚が無くなるとか動かなくなる部分が生じる様な事はありません。なぜならば、通常の神経を取るわけでは無いからです。取るのは、壊死をした根管内の歯髄と言う組織です。麻酔が効いてい無い状態で触ると激痛があるので、俗に神経と呼ぶのです。この歯髄は感覚としては、歯がしみるとかと言う様な歯の感覚を司りますが、別にこの感覚がなくても、不自由はありません。
咬むと、何となく痛い歯が有ります。その歯は神経がとって有ります。こんな物なのでしょうか?
咬んで違和感が有るのは、歯の周囲に炎症が有るからです。専門的には歯と歯が埋まっている骨の間にある歯根膜です。この歯根膜に炎症が起きているのです。それでは、何が原因で炎症が起きるのでしょうか?炎症とは、色々な原因で起きますが、口の中では主に2つの原因が考えられます。1つは細菌。も一つは過度な力(チカラ)です。細菌の場合は、根の中の不具合か、歯周病の様な歯と骨の間における感染が考えられます。力の場合は、そこの歯に強い力がかかっている様な場合です。どちらかは、歯科医師による診断が必要です。
ホルマリン系の薬剤を根の中に入れる場合が有ると聞いています。健康に影響は無いのでしょうか?
歯の中に入れた薬剤も気化する様な性質の物、特にホルマリン系の薬剤は速かに血中に出てくるそうです。よって、これらの薬は使わ無いほうが良いと私達は考えています。特にFCと言うホルマリンとクレゾールの混和液があります。特徴としては、もの凄く臭いです。これを使っている歯科医院は、院内に入ると独特なクレゾール臭がありますので、一発で分かります。おかかりの歯科医院がその臭いがしていなければ、ほぼ使っていないと思います。根管治療はこの様な殺菌力をもった薬剤を根管内に入れておかなくても治療する事が可能です。
インプラントを予定している歯の隣の歯の根っこの先に膿をもった袋が有ると言われました。インプラントに悪影響を及ぼしませんか?
インプラントを予定している歯の隣に根先病変と言う歯の根に異常がある歯が存在するのだと思います。私達は基本的に症状の無い根先病変については、経過観察としています。しかし、このインプラントの隣にあり、2ミリ程度しか距離が無い場合は、根先病変の有る歯の根管治療を優先して行っておきます。これをしておかないと、インプラントに感染を起こす事が有あります。
上顎の根の治療をしてから、何となく頬の部分や小鼻の当たりを押すと違和感が有ります。どうしてでしょうか?
上顎の奥歯の根の先には、上顎洞と言う空洞が有ります。これは副鼻腔の1つです。この副鼻腔に炎症を起こすのが上顎洞炎です。この部位の炎症の原因として歯が関係ある場合も有るのです。つまり上顎の奥歯の歯髄が死んでしまって、炎症を起こしていると、その上方にある上顎洞にも炎症を生じる事が有るのです。これは歯性上顎洞炎と呼びます。この歯性上顎洞炎はとても多いのが現状です。と言うのは、最近は歯科用CTが普及したために、立体的に細かく診断が出来るためです。以前のレントゲンでははっきりと歯性上顎洞炎とは言い切れなかったからです。また、上顎の犬歯の場合、根の先がちょうど小鼻の横あたりになります。この根尖部に何らかの炎症があると、この部分を押すと痛い場合があります。この場合歯科用CTを撮影し、根管治療で治るかを検討します。
根管治療後の被せものについて教えてください。
根管治療を行った歯の多くは、被せる治療を必要とする場合が多いです。それは咬み合わせる部分を大きく削ってあったり、虫歯で崩壊していた部分が多いからです。しかし、前歯の場合、自分の歯の多くが残っており、あまり力がかからない場合は被せない場合も有ります。この場合は、根管治療を行った穴をレジンと言うプラスチックで詰めるだけで治療は終わりです。
被せる素材としては金属の場合は、セメントが接着しにくいと言う欠点があります。よって外れてしまったりセメントとの境界部から再度の虫歯になったりする場合も有ります。又、日本の健康保険で認められているCAD/CAM冠は、専門的には未重合部が殆ど無いために、セメントと結合しにくい欠点があります。よって早期に脱落をする場合が1割程度はあります。
しかし、ジルコニアを除くセラミックの場合は、歯やレジンンと強固に接着しますので境目がない状態になります。よってセラミックで被せるのが最良と思われます。ただ、セラミックにも種類がありますが、珪酸リチウム系が良いです。
グラスファイバーの歯の土台とは何ですか?
根管治療が終わった後に、土台を作って被せます。以前は金属を使う事が多かったのですが、歯の根が折れる原因にもなるので現在ではグラスファイバーとレジンを使うようになってきました。しかし、このグラスファイバーも細いものを使うと長年の使用により折れる場合も有ります。
根管治療を受けていますが、先が見えません。転院する事は可能でしょうか?
日本の健康保険制度はフリーアクセスですので、患者さんの意思で転院が可能です。しかし、長い間、根管治療を受けている場合、歯の内面や根尖孔を削りすぎている場合も多く、治療が難しい場合も多いのです。
根根管の中に細菌がいなくなったことを調べることはできますか?
健康保険にも細菌検査という項目が入っていますが、これは空気を好む細菌の検査です。根管内は空気が嫌いな嫌気性菌が多いのであまり意味が有りません。また、嫌気性菌の培養をやってもほぼ意味がありませんので、殆ど行われなくなりました。と言うのは根尖孔をしっかり密閉してしまえば、多少の細菌は悪さをしない事が臨床的には分かっています。しかし、歯髄細胞を移植する様な場合は、完全なる無菌が求められます。よってこの場合はPCR法により検査を行います。
ゴリゴリと毎回、歯の根の中を削られています。影響はありますか?
これが相当に問題なのです。咬む面に関しては、ある程度、削ってもセラミック等で被せてしまえば一体化をしますので、あまり強度は落ちません。しかし、根管は削ってしまった後にはガッタパーチャと言う様な強度のない素材を使います。よって根管治療後に長年すると歯根が折れてしまう事もあるのです。よって根管こそ、必要最低限の切削が求められます。
根管治療の時にジージー言って水が出る器具を使っています。あれは何ですか?
眼鏡屋さんで、眼鏡を洗ってもらう超音波洗浄器というものがあります。微細な振動で汚れを落とす器械です。これと同じような超音波の振動を根管内で起こすことにより根管内を綺麗にする機械です。根管治療には必須中の必須の機器です。
永久歯と乳歯の根管治療の違いはありますか?
乳歯は歯根が短くなってきて、永久歯に生え変わります。つまり歯自身が、自分の歯根を短くして抜けるのです。よって脱落した乳歯には歯根部は殆どありません。ですからこの歯根が吸収してくる事を考えて治療をします。よって、大人に用いるような固形物による根管充填は行いません。糊材とペースト状の材料を用います。大人の場合は、ガッタパーチャという物質と酸化亜鉛などを混ぜたスティック状のモノを使う場合が多いです。
歯の神経を取ったはずの歯がしみます。つまり根管治療を受けた歯がしみる事はありますか?
根管治療を受けた歯は、歯の中の感覚センサーも取っていますので、物理的にはしみません。ただ、稀に非常によろしくない根管治療の場合、意図的ではなく歯髄が残っている場合があり、この場合はしみる場合があります。一般的には隣の歯がしみる場合が多いのです。
下の六歳臼歯ですが2本の根のうちの片方が上手くゆかないそうです。よって、歯根のうちの半分を抜歯すると言われました。この様な事は普通に行うのでしょうか?
この治療はヘミセクションと言います。以前は良く行われた治療方法です。しかし、現在ではほぼ行われなくなりました。それは第一大臼歯(六歳臼歯)の2つの根のうちの片方を抜いてしまった場合、手前または奥の歯との間に隙間ができてしまいます。これが凡そ5~6ミリ程度になります。この隙間を何とか埋める場合、隣の歯を削ってブリッジをする程度の治療しかできません。しかもブリッジの土台になる歯ですが、虫歯も何もない歯を削る必要があったり、ブリッジにした場合、土台のアンバランスも生じます。よってこの様なブリッジは長持ちをしない場合が多いのです。それではこの5ミリ程度の隙間にインプラントはできるでしょうか?答えはNOです。よって、現在では第一大臼歯を1本抜歯して、そこのインプラントを埋める。そして周囲の歯は削らない。この治療の方がスタンダードです。
上の奥歯ですが、根の先に大きな膿の袋があり、根の治療では治せないのでその根だけ抜歯をすると言われました。そんな事は一般的ですか?
上顎の第一大臼歯(六歳臼歯)は下顎の第一大臼歯と大きく異なる点があります。それは上顎の第一大臼歯は殆どの歯で根が3本あります。その1本の口蓋根と言う根は内側に存在しています。この口蓋根を抜歯しても、歯の安定性は悪くなりますが、隣の歯との接触関係が保たれるのです。これをトライセクションと呼びます。この方法は今でも、用いられる場合があります。しかし、それほど長くは使えない場合が多いのです。
根管治療よりも、インプラントの方が良いと言われました。そうなんですか?
ケースバイケースと思われます。根管治療で治せる歯の場合は、先ずは根管治療をしてみるべきだと思います。しかし、根管治療をしても治療結果が出にくそうな場合は、抜歯をしてインプラントにした方が速めに咬めるようになる場合も有ります。特に、奥歯はその傾向があります。それはあまり審美的な面を考慮しなくて良いからです。
根管治療を受けた歯は歯列の歯列矯正治療はできますか?
できます。ただし、根管内が大きく削られて治療がされている場合など、咬む力の方向が変わったりした場合に、歯根破折を起こす場合が考えられます。よって慎重に行う必要が出てきます。また、被せものが金属だった場合には、ブラケットという矯正器具が張り付かない場合があります。この場合は冠を被せなおしたりする事もあります。
根の治療を受けた前歯ですが、周囲の歯と色が変わってきました。何とかなりますか?
根管治療を受けると、多かれ少なかれ、歯は変色します。この治療方法としては、審美的な被せものを使う方法と、歯の内面から漂白処置をする2つの方法があります。
この漂白を行う場合は、根管治療がきっちりと出来ている必要があります。これは根管内に隙間が有った場合に、漂白材が根の方に漏れ出した場合、の根吸収を起こす場合があるのです。これを内部吸収と呼びます。この内部吸収を起こさないためにも、しっかりとした根管治療を漂白材の漏洩対策も必要になります。
被せる場合は、前歯の場合、現在はジルコニアと言う冠を作って、それにセラミックで色付けした物を使うことが多いです。