根管充填(こんかんじゅうてん)
根管治療は、歯の根の中の治療です。治療が終わって被せてしまえば、レントゲン撮影をしない限り、その良否は専門家でも分かりません。
ちょうど、建築における基礎工事と同じです。一旦、家が建ってしまえば基礎は直接見ることができないため、どんな工法で行われているかは伺い知ることはできません。
基礎工事が悪ければ、家は傾くかもしれませんし、地震の際には倒壊する可能性すらあります。
治療の方法自体は根管治療のページで説明しましたが、このページでは根管治療の最終段階の根管充填について模式図で説明します。
根管充填とは、本来歯髄が存在していた場所を人工物に置換する事です。もっとも大事なのは根尖孔と言う神経や血管が供給されていた孔を閉鎖する事です。この根尖孔を塞がないと、根管内に存在している細菌や壊死物質から化学物質が漏れ出て、歯の周囲の歯根膜と言う部分に炎症を起こします。そのため神経を取ったはずなのに痛いということになります。理論的には、細菌や壊死物質から漏れ出る化学物質をゼロにすれば根尖孔などは塞がなくても良い、という説が成り立ちます。しかし、それが出来ないのが現実なのです。ですから、根管内を可及的に洗浄・除菌をして、根尖孔を緊密に閉鎖するという方法が取られるのです。
問題はこの根管充填の方法により根尖孔の閉鎖の良し悪しが決まってしまうのです。それは予後にも直結します。それは治療をしたのに、いつまでも咬めなかったり、たまに腫れたりする症状になって現れます。
ガッタパーチャという南の国の木の樹液から取れる天然樹脂と酸化亜鉛などを混ぜた「ガッタパーチャポイント」を、固形のまま糊を付けて根管の中に押し込む方法。日本では40年に渡りこの方法が教育されております。よってほとんどの歯科医院ではこの方法で根管充填がされています。しかし、根尖孔の緊密な閉鎖という観点からすると、上手くゆくのは非常にラッキーなケースです。多くの場合は、症状はなくてもレントゲンを取ってみれば、半数程度に根の先に影がみえます。
最大の欠点は、ガッタパーチャの熱可塑性を利用していない点です。ガッタパーチャは、熱をかけることにより固体から半固体に変化します。そして、常温に戻るとその形態を維持します。この性質を利用をしないで、とにかくガッタパーチャポイントを沢山詰め込むだけですので、楕円形などの不定形な形をした根尖孔を閉鎖する事が難しいのです。又、根尖孔から固体のままのガッタパーチャポイントを押し出した場合、慢性疼痛の原因になる事があります。ガッタパーチャを詰め込む際に、スプレッダーと言う器具を用いてガッタパーチャポイントの中に押し込みます。これがガッタパーチャポイントを側方に押しますので、側方加圧根充法と呼ばれてます。
垂直加圧根充法
ガッタパーチャーを根管の中に充填するのは側方加圧根充法と同じです。しかし、大きな違いはガッタパーチャを熱して軟化させた状態で根尖孔の方向に押します。米国で行われているCWCT法(Continuous Wave Condensation Technique)法は、日本で使われているガッタパーチャよりも3倍程度太いポイントを形態を整えた根管の中に挿入します。そしてレントゲンで位置を確認してから、瞬間的に200度程度の温度が発生する細い針状の器具であるヒートプラガーで、上方からガッタパーチャを溶かします。そしてその上からプラガーと言う器具で押します。これで根尖孔を閉鎖します。ただ、この方法は根尖部付近のガッタパーチャが溶けていない事があるため、根尖孔の閉鎖が不完全な場合もあり、それが予後不良に繋がります。
K.SRCT法(ケースルクト法)
当院の医療法人社団敬友会理事長の久保倉が開発した方法です。垂直加圧根充法の一種です。根の中の削り方(根管形成)はCWCT法。根管充填方法は今から40年前に大津晴弘先生が発表したオピアンキャリア法とした方法。CWCT法の良いところとオピアンキャリア法の良いところを組み合わせた方法です。CWCT法の根尖部のガッタパーチャの軟化が不良な事を克服する意味で、根管挿入前から軟化させるオピアンキャリア法をアレンジして使用。そして、オピアンキャリア法では根管充填を成功させるために削り過ぎていました。その点を克服するために、CWCT法の規格的な根管形成法を取り入れました。2018年に専門書により発表。翌年、日本歯内療法学会でも発表しております。いわゆる「とんでもない方法」ではございません。
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